キューバのホテル事情

キューバの市街地では、ほとんどの人が「カーサ(おうち)」という民宿に泊まる。政府公認の民宿(B&B)を経営している家族が多数いて、その家の一部屋に間借りして、簡単な朝ごはんを食べるのだ。調べてみると、まぁ当然、語学的な問題は出てくる。


スペイン語圏のキューバなので、当然スペイン語でカーサを経営している家族とやり取りするのだ。「英語できます」という謳い文句がある所があるし、グレードもあるので、それに気を付けて予約したらいい。今日日、日本にもいくつかキューバ観光の本が出ており、そういった本に出ているカーサは有料カーサだと思われる。


私は、ひとり旅の時に限っては『安全と時間はお金で解決する』という、いけ好かない心情で旅をするので、そこそこのホテルに泊まる事にした。政府公認の民宿が一般的な宿となるHavana市街地では、ホテルを見つけるのが難しかった。逆に郊外まで行ってしまえば、料理もアクティビティもこみこみのリゾートホテルがたくさんあり、美しいカリビアンブルーのビーチに、数か所あるホテルのレストランやバーで食べ方だいのみ方だいがある。


また、Havana市街地でも、旧市街からはちょっと離れる場所まで行けば、有名ホテルがたくさんある。ただ、よくあるアメリカ系のホテルは、案の定、まだあまり参入してないようだった。


さて、どうしようか。お金で解決する事になりそうだな・・・と、計画段階で私は思った。まぁ、そもそも、ツアー一切抜きで、キューバに一人で行ってみよう!とか言ってる時点で、お金をかけてでも安全は買おうと決めていた。よし・・・。


タクシー事情は本で読む限り、観光客はアンティークな車に乗りたがるし、実際に、アンティークタクシーがほとんどなので、結構高いという事がわかった。そもそも私は写真を撮る旅だ。だとすると、徒歩で旧市街をテクテクできる方がよい。ならば、ホテルは旧市街から近い方がいいのだ。


いくつかホテルサイトを見てみた所、米系ホテルサイトにはほとんどキューバのホテルが乗っていない事がわかった。やっぱり、そうか・・・と思いながら、ヨーロッパ系、カナダ系など、米系以外を探る。そうすると、いくつか見つかった。


ホテルサイトの中で、市街地近く、そして★の数で絞り込む。口コミもかなり読み込んだ。その上で、最終的に3つぐらいのホテルに絞り込んだ。その3つのうち、一番高い所にした。まじ、高い。多分、今まで一番じゃないかしら・・・。


Iberostar Parque Central....ででーん、五つ星です。人生初の五つ星。と言ってもですね、キューバ・ハバナなので、そうね・・・ホテルの外観や部屋は、アジアの3★、ヨーロッパの4★ぐらいの感じでした。サービスは、すんっっっごいフレンドリー。でも5つ星でもWi-Fiはロビーと屋上のプールにしかない。


ホテルの屋上のプール。
屋上からの眺め。

多分、一人でふらふらとHavanaに旅に来るアジア人女性は少ないのだと思う。しかも、私はいい年してるくせに、すんごく童顔なのだ。ちなみに、イタリアの小さな村の仲良しB&Bのお兄さんは、私のパスポートを見て「えええええっ?24・5歳ぐらいかと思ってたよ!」と驚き、村中に私の実年齢を言いふらしておった。ヤメロ。


なので、童顔なアジア人の若い女子が、おとうのお金で5つ星ホテルに泊まりに来た・・・とでも思われていたと思う。

ちがいますよ。かなりのお歳の独身ひとり女性が、身銭切って安全と快適さを買うためにこのホテルに泊まってるんですよ。この旅が終わったら、もれなくおかずはモヤシと卵炒めになりそうなので、この旅でいくら太ってもよかろうと思ってる人なんですよ・・・。


しかも、安全と快適さはお金で買うために、五つ星ホテルにしたのだ。当然、コンシェルジュもこき使う。そのためには、そこそこ見栄えのする服装も心がける。時々アジア人で、高いホテルに泊まっているのに、その服装?!と驚く事があるのだけれど。悲しいかな、人間って外見で人を判断するものなのだ。だから、私はホテルのスタッフに覚えてもらうためにも、数日間は、品の良いお金持ち風の服装を選んで着る。とは言っても、ユニクロで完成する上下よ。『風』だから。白い麻のシャツに、麻のパンツ。エスパドリーユに、ストローハット。品よさげな大きめのイヤリングにサングラス。「私、ひとり旅が趣味な小金持ちですの・・・」といった雰囲気を醸し出すのだ。


私: あの・・・車で回れるツアーを申し込みたいのだけれど。

コンシェルジュ: もちろんです。半日?一日?

私: どっちのツアーが多いの?ヘミングウェイミュージアムにも行ってみたいけれど。

コンシェルジュ: でしたら、半日がよいかと思いますよ。

私: どういう所を回るのか、決まってるの?

コンシェルジュ: 人数が集まれば、今日の午後にでも。集まらないなら、明日の朝なら、多分、一人ぐらい足せますよ。車なので、だいたい5人なのです。

私: 自分ひとりで車を雇うってできる?

コンシェルジュ: あっ・・・もちろん!できますよ!その場合、料金は高くなりますが。

私: さっき提示されてた値段X5って事?

コンシェルジュ: 特別に割引できるドライバーを用意しますよ。

私: そう?じゃあ、お願いしようかな。時間制なの?

コンシェルジュ: そうですね、1時間で4000円から5000円ぐらい。

私: そう。じゃあ、ヘミングウェイミュージアムと、ここと、ここを回ったらどのぐらい?

コンシェルジュ: 3時間もあれば十分かと。おひとりで回られるんですし。

私: ドライバーは英語できる?

コンシェルジュ: 英語できる人を探します。

私: じゃあ、お願いするわ。


ってな具合で~。内心「ひゃー。1万5せんえんかよ、3時間で!まじか、痛いなおい。何日間モヤシ生活すれば、大丈夫かな・・・」と頭で計算しているのですが・・・。いや、行くぜ。

2時間後にロビーに行くと、コンシェルジュのおじさん(いや、多分私とそう変わらん・・・)が、「いい車とドライバーが見つかったよ!最高クラスだよ!」とドライバーを教えてくれた。


そこには、いかにも「俺、今バブルきてるんすよ」っていう感じの、私より多分年下であろう、一見セレブ風味を醸し出した男が立っていた。名前は・・・忘れた。本当に忘れた。それぐらいどうでもいい感じだった(笑)。でも、名前必要なので・・・乗っていた車の名前から「インパラさん」とでもしようか。そうだなぁ・・・007のダニエル・クレイグを派手に、そして、超チャラくした感じを思い浮かべてください。


インパラ: 初めまして!どこに行きたい?


ってなわけで、このドライバー、私を金持ちの小娘だと思ったのか、私が伝えた場所以外にも連れて行き、しかも、サービスだと言って、一杯おごってくれた代わりに、私に昼飯をおごらせ、そして自分の息子の誕生日に自転車買いたいのだと言って、高級住宅地にあるモールにまで付き合わせ、私が写真撮るの趣味だと言ったら、自分の車を最高のロケーションで撮らせてやると、変な場所に連れて行った。臭いローカルビーチ。


この背景で撮れと言われて撮った写真。死ぬほどダサい。

結論から言う。

余計なサービス満載だったが、「なるほどね。成金タクシードライバーってこんな感じの生活か」と分かったので、よしとする。

君が好きだと思ってと言って連れてこられた、よくわからない港。
ヘミングウェイが来たことあるレストラン。
対岸からのHavana。
キューバのガウディと呼ばれたおじいさんのアトリエ。
インパラの助手席。



このインパラさん、働きまくってお金を作って、ロシアに渡り、ロシアで料理人をしばらくしていたが、キューバに戻ってきた。そこで、観光ガイドを始めた所、ロシア人の一人旅の金持ち女がたまたま彼にガイドをお願いし、彼を気に入ってしまって1か月の滞在をした。その1か月の間、当然、ガイド以外にも、リゾートホテルについて行ったりし。要するに「おヒモ」要員として重宝されたらしい。ロシアに一緒に来てほしいと言われたが、その時には現在の妻とすでに付き合っており、妻と一緒の人生を歩む事にしたんだ・・・と美談のように話していた成金ヒモ・浮気男・タクシードライバーだった。


「へぇ」「そうなんだ」「それで?」と、彼に興味があるわけではなく、成金キューバ人の話を聞くという滅多にない機会に相槌を打っていたら、気をよくしたのか、自分がよくセレブに呼ばれて行くというヨットハーバーや、高級住宅地の間にある公園もドライブで連れて行ってくれた。


はっきり言う。いや、大したことない。そりゃそうだ。キューバなんだもの。Havanaなんだものね。


ともあれ、面白い一日を終わって、ホテルに戻ってきた。

コンシェルジュ: 今日のドライブはいかがでした?

私: ありがとう。英語で興味深い話も聞けたし、楽しかった。明日は、市街地を歩いてツアーしたいんだけれど。誰かお願いできる?

コンシェルジュ: わかりました。手配します。


こうやって、私はパトリシアちゃんと出会ったのだった。


Almost a solo traveler

カメラを持っていく、 旅(の計画と記録と記憶の)ブログ。 写真ブログ。 多分ほぼほぼイタリア。

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